

名前 | 樅野 太紀 もみの たいき |
出身地 | 岡山県倉敷市 |
生年月日 | 1974年10月13日 |
主な担当番組 | – しくじり先生 – NHK紅白歌合戦 – MUSIC STATION – あいつ今何してる? など |
Q:仕事を始めてから1番衝撃を受けた放送作家は?
・渡辺真也さん
放送作家になって初めて出席した会議で渡辺さんが提出してる宿題の紙を見て「紙でこんなに面白い人がいるのか!」と衝撃を受けました。それまで芸人の中で生きてきたので「喋り」じゃなくて「文字」で面白い人に初めて出会いました。かなり影響を受けました。
・石原健次さん
彼ほどの「パワー」と「リーダーシップ」を兼ね備えた人はいません。元芸人の放送作家として、僕は彼の作った道を歩いているだけです。
Q:仕事を始めてから1番衝撃を受けたディレクターは?
・藤井智久さん(テレビ朝日)
僕をテレビの世界へ導いてくれた方。恩人。
はじめの2年間は冗談抜きで毎日怒られました。
「俺は面白い!」という鼻を毎日折られました。
でも、藤井さんの会議を経験したので今の自分があると思っています。
とにかく細部に拘る。全出演者のことを考える。
藤井さんからテレビ番組の作り方を教えて頂きました。
深田 初めて出席した会議での渡辺真也さんの企画って内容覚えてます?
樅野 ごめん、どんな企画だったかは覚えてないけどとにかく衝撃だったのは覚えてる。カミナリ落ちたっていうくらい衝撃受けたの。
深田 それ「くりぃむナントカ」ですか?
樅野 いや、放送作家になって1個目の特番。「限界アンタッチャブル」
深田 真也さんで印象に残ってることってあります?
樅野 おれは真也さんにはめちゃくちゃ影響受けてると思うよ。真也さんが会議でおっしゃってたことで未だに放送作家として大事にしてることがあってそれが「ドキュメントが1番面白いんだよ」っていう言葉。
深田 ほぉ。
樅野 ある時、会議で「収録で台本通りに進むことなんかないしその場で起きたことが1番面白いんだよ。ドキュメントに勝るオモシロはないんだよ」っておっしゃっててそれを聞いてから『起きたことを全部面白がろう』っていう考えは大事にしてる。
深田 ぼくは真也さんとお仕事してたのは超ペーペー時代なんでたいした分析も出来てなかったんですけどざっくりした質問しちゃいますけど渡辺真也というのはどういう放送作家だったんですかね?
樅野 どういう作家か~まあ、“お笑い侍”だよね。ペンタゴングラフで「お笑い」の項目だけ突き抜けてるっていう(笑)
深田 ちゃんとお話したことあります?
樅野 何度かご飯行ったことあるけど大学生のときにテレビでコントとか見てて「これならおれの方が面白いと思った」って言ってたよ。で、テレビコント大賞みたいなので優勝して「案の定優勝したんだよ。おれ面白いからさ」って(笑)
深田 そういうこと言う人だったんですか?
樅野 その時は言ってたよ。“自分は面白い”ということは自負されてたと思うけどね。
深田 他に覚えてることあります?
樅野 そうだね~。あ、おれ、「シルシルミシル」が始まる前にあの番組に通ずる真也さんの精神を目撃したことあるよ。
深田 何ですか?
樅野 ある時、会議と会議の間にメシ食うことになったんだけどステーキ屋の前で立ち止まって店の外に置いてある看板をじーっと見てたの。確かステーキが980円とかだったんだけど「入ります?」って聞いたら真也さんが「いや…怪しいな。ステーキ980円って安すぎるだろ。これ絶対、肉になんかやってんな。やめよ」って。
深田 言いそう(笑)
樅野 おれからしたらステーキ980円って普通でしょ?って感じなのよ。でも真也さんは「絶対おかしい!」って(笑)「シルシルミシル」のナレーションの疑い目線の精神って普段の真也さんのあの感じから来てたよね。
深田 ぼくこのサイトで真也さんの伝記みたいなの作りたいんですよね。関わったテレビマンに話聞いていったり北海道に行ってご両親にも話聞けないかなとか。ぼくとしては未だにあの人のこと知りたいって気持ち強いんで。
樅野 あ、そうなんだ。面白そうじゃん。
深田 あと、石原健次さんはどういうところが凄いと思います?
樅野 なんでも出来る人だね。バラエティの中でもどんなジャンルでも出来るしドラマとか映画の脚本も書けちゃうし。石原さんがチーフ作家の番組って石原さんが台本書いて、収録にも行って、VTRチェックもしてまあ全部やるのよ。あの姿見てると「この人についていこう」ってなるよね。
深田 ぼくはお仕事したことないですけどとにかく仕事をされる方っていうのはよく聞きます。他に何かあります?
樅野 「いつ寝てんの?」ってよく思うんだけどちょっと時間あったらすぐに映画見に行くしバラエティもドラマも、とにかくテレビもよく見てるし。
深田 へぇ~。
樅野 おれあそこまでのエンタメへの熱ってないんだよな。だっておれが最近面白いって思った映画「君の名は。」だよ(笑)「タイタニック」見て泣いた男だよ(笑)それくらいおれは映画もそんなに見てないのよ。石原さんは色んなものを本当によく観てる。
深田 石原さんのそういう原動力って何なんですかね?
樅野 本当にテレビが好きなんだっておっしゃってた。あのパワーは本当に凄いよ。
深田 あと、「衝撃を受けた」ってことで言うと芸人をやってた時に衝撃を受けた人っています?
樅野 1番最初に凄いなと思ったのは次長課長さんだね。「同期じゃなくてよかった」って思った。
深田 樅野さんが初めて見た時は次長課長さんは1年目とかですよね?その頃から面白かったですか?
樅野 もう飛び抜けてたよ。次長課長さんと野性爆弾さんは飛び抜けてた。もちろん、ご本人たち的にはこの20年で変化してるんだろうけど俺の中では当時から変わってない。あの頃から今までずっとあの面白さ。そりゃあ売れるよね、っていう。2組とも最初から圧倒的に華があったし。
深田 その後、芸人をやっていって見てきた中で他に衝撃を受けた方は誰かいます?
樅野 ロバートの秋山。
深田 おぉ、秋山さん。
樅野 ルミネでステージにたくさん芸人がいて企画コーナーとかやるときに秋山が何かやると舞台上の芸人も全員お客さんになるの。その時だけはみんな普通にお客さんになって笑うのよ。そんなことそれまで無かったのよ。芸人同士もみんなライバルだからさ。
深田 それは秋山さんがやるネタってことですか?
樅野 いや、平場のゲームコーナーとか。「全く新しい奴出てきたな!」って思ったもん。芸人みんなが松本人志さんが作ったお笑いのルールの中でやってきてたみたいなとこあったんだけどそれとは全く違うルールで来るというか。
深田 へぇ~面白い。
樅野 秋山を最初に見た時は度肝抜かれたね。あとは綾部と吉村かな。
深田 ほぉ、どういうところが?
樅野 最初の頃は2人ともネタはそんなに面白くなかったんだけどどのライブでも1番目立ってたのがあの2人だった。
深田 それは勢いとかですか?
樅野 スベろうが何しようが「このライブで爪痕残してやろう」って言う気迫があの2人は飛び抜けてたよ。で、やっぱりあの2人が1番印象に残るの。あ、あとはハリセンボン。
深田 あー、ハリセンボンのお2人が初めて出た番組が確かチャイルドマシーンさんがMCの番組でしたよね?
樅野 そう、ハリセンボンを番組に初めて出したのはおれら。そもそもの出会いはライブだったんだけどそこでチャイルドマシーンがMCでハリセンボンがネタをやってるときにお客さんにはそんなウケてなかったんだけどおれらは袖で爆笑しながら見ててネタ終わりに出ていって色々いじったんだけど二人の返しが全部面白かったの。
深田 当時、駆け出しでしょうからその頃はまだ今ほど返しのパターン決まってないですよね?
樅野 そう、全部が完全なアドリブの返し。それが全部面白かったの。それで「ヨシモトファンダンゴTV」の番組に出てもらうようになったの。
深田 では、テレ朝の藤井智久さんの話もお聞きしますが最初は毎日怒られたんですよね?
樅野 毎日怒られた(笑)会議で宿題を1人ずつ発表していくでしょ?そこで「これ何がおもしれえんだよ!説明してみろよ!」って。
深田 それは本当にネタがダメだったのか?教育としてやってたのか?どっちなんですか?
樅野 まあ、最初は本当にネタもダメだったんだろうし自分が番組に入れてるから甘やかさないようにっていうのもあったと思うよ。
深田 それいつまで続いたんですか?
樅野 ある日、完全に風向きが変わった瞬間があって。「くりぃむナントカ」で台本をチェックする時に藤井さんがじっと黙って台本読み進めて、読み終わった後「これ、誰が書いたんだよ」って言ったの。
深田 怖いトーンで言いますね~
樅野 そしたらディレクターの小田さんがおれに「ごめん」って顔して「樅野さんです」って言ったの。藤井さんの雰囲気が明らかに怒る時の感じだったから。そしたら藤井さんが舌打ちして「くそ!おもしれえな!」って言ったの。それでその日から他のディレクターのおれを見る目が変わって色んなディレクターから台本頼まれるようになったの。あの日が転機だったね。
深田 なんか劇的でカッコいい話!(笑)
藤井さんからこれを学んだっていうところはあります?
樅野 おれは放送作家始めてから最初の会議が藤井さんだったから「1番練習がきつい高校の野球部でやってた」みたいな感じかな。1000本ノック、いや1万本ノックを毎日受けてた感じ。
深田 放送作家人生で藤井高校の練習が1番きつかったですか?
樅野 そうだね。おれが見た中では1番だね。今、あれをやったら高野連で問題になるから(笑)あと深田も書いてたけど本当に「ここまで考えて番組作るんだ」っていうのも学んだ。藤井さんは収録にいる全員の演者のこと考えて番組作ってるよね。「この時、この人はどういう気持ちなんだろ?」とか。藤井さんって演者の並びを決めるのにも凄い考えるじゃん?「右端はこの人で、その横がこの人…。いや違うか」って感じで。
深田 はいはい、そうですね。
樅野 あとドッキリに対する厳しさとか。ドッキリの偽番組の企画ですら細かく考えてなかったら怒るし。演者をちゃんと騙してあげないといけないって本気で考えてる。藤井さんのもとでやらせてもらってたから他の現場に行っても何とか戦えるって感じあるよね。
深田 その後、藤井さんとのいいエピソードみたいなのあります?
樅野 おれ、毎年正月に藤井さんに新年のご挨拶のメール送ってるんだけど何年か前に「北野とか芦田とか、うちの若いのを頼むな」っていう感じのメールをいただいた時は嬉しかったね。あと、おれは藤井さんには絶対に恩返ししたいって思ってたから「しくじり先生」で賞をもらったときに授賞式に藤井さんと出られたのもすごい嬉しかったね。
深田 これはいい話ですね。
私は予知夢をみることができるのですが、私の葬式には誰も来ないそうです。