

名前 (本名) | 八坂英敏 やさか ひでとし |
出身地 | 大分県 |
生年月日 | 1983年8月6日 |
主な担当番組 | – 和風総本家 – お願いランキング – 得する人損する人 など |
Q:テレビ史上、最高の企画だと思うのは?
「はじめてのおつかい」
普通の人が主役、誰もが経験のある「おつかい」をテーマにし、笑えて、泣けて、出ている人も見ている人も、みんな幸せになる完璧な企画だと思います。
そして今、はじめてのおつかいに出ていた子が結婚し子どもを産み自分の子に「はじめてのおつかい」をさせる。といった長寿番組にしかできない神がかった企画に展開しているので僕の中では怪物番組です。
死ぬまでにこのような番組を考えられたらなといつも思っています。
深田 史上最高の企画は「はじめてのおつかい」。
八坂 はい、最強だと思います。自分の中でこれはゆるぎないです。毎回、録画したのを1時間ぐらい見たら1回見るのやめるんです。号泣しすぎて疲れるから(笑)だいたい番組を最後まで見終わるのに2週間ぐらいかかりますからね。
深田 いい視聴者ですね(笑)昔から好きなんですか?
八坂 昔から大好きでしたね。特に自分に子供が出来た8年前からは毎回欠かさず見ててどんどん好きになってますね。
深田 子供出来たらやっぱりもっと好きになるんですね。
八坂 あとは僕の中で“いい企画の条件”として「発想元がわからない。作り方がわからない」ってのがありまして、「はじめてのおつかい」はまさにそうで、どうやって思い付いたんだろ?どうやってあんな笑えて泣ける展開を作れるんだろう?って。
深田 それ八坂さんよく言いますよね。「あの企画、どうやって思いついたのか分からない」って。
八坂 だいたいのテレビ企画って「これはこういう風に考えたんだろうな~」ってある程度予想ができますからね。でも「池の水~」や「水曜日のダウンタウンのネタ」や「イッテQのロケ展開」とかは「これどうやって思いついたんだろ!?」ってよく思うので、そういう時に「この番組のスタッフさんは凄いな~」って単純に思います。
深田 なるほど。あと少し話それますけど、聞いてみたいことあったんですけど八坂さんってリサーチ歴長かったじゃないですか?
八坂 10年くらいやってましたね。
深田 リサーチャー目線から見て「こういう番組うまくいきがち」っていうのあります?
八坂 う~ん、それは難しいし、答えづらいですけど…しいて言うならリサーチャーを雑に扱う番組は早く終わりがちですかね(笑)発注が雑だったり、探して欲しいネタの狙いが明確ではなかったり、あと、ADさんが明らかにリサーチャーを下に見てる感じの番組(笑)
深田 でもそういう仕事ぶりが番組の色んなとこに繋がってそうだし、マジであるんでしょうね。リサーチで関わってみて、いい番組だと思ったのは?
八坂 それは「マツコ有吉の怒り新党」ですね。リサーチは大変でしたけど、狙いが明確でしたし、ネタの志も高くて、OA見ても毎回面白いし、リサーチとして携わって勉強にもなりましたし、凄い番組でした。あとは「シルシルミシル」もそうですね。
深田 あのAD堀君が「神保町カレーのお初」とかを探していく企画の探し方って、八坂さんのリサーチから来てるんですよね?
八坂 でしたかね(笑)たしか「神保町で一番古い店を探して」っていう発注が来た時に、一番古いお店が全然わからなかったので、古そうなお店に電話をして「こちらのお店よりも古いお店をご存知ですか?」って直接店主に聞いて、お店を言われたらまた次に同じように電話してって数珠繋ぎをしていって、それをそのまま順番で資料にまとめて出したんです。そしたら、会議で偉い人が「この探し方、面白いな」ってなって構成に反映されたみたいですね。
深田 変な自慢ですけど、元々「お初」の企画ってぼくが作家1年目だった時に出した案が原案で始まって、派生してAD堀君の企画になって彼が凄い人気者になったんで。ぼくら堀君の人生にけっこう関与してますね(笑)
八坂 そうですね(笑)
深田 八坂さんってリサーチの資料もこだわりが細かいんですよね。企画書もレイアウトにかなりこだわってるし。企画書のレイアウトもけっこう勉強したんでしょ?
八坂 そうですね。企画書に関する本読んだりして勉強しました。「人間はZに読む」とか「色は3色以上使っちゃダメ」とか「左に画像をつけて右に説明を書く」とか。あとは雑誌を見たり、企業のホームページを見てレイアウトやフォントをマネたりしてましたね。
深田 そこまでやる人はなかなかいないですよね。そこまで努力家なのに学生時代は勉強できなかったんですよね(笑)
八坂 できなかったですね(笑)
深田 なんで企画書のレイアウトはそんな勉強出来たんですか?
八坂 それは単純に企画を通したかったからですよ。企画書作業が楽しいってわけではないですから。
深田 ちなみに企画書は1年で何本くらい書いてますか?
八坂 だいたい年間200本くらいですね。
深田 すごいなー
八坂 いやいや、200本ってそこまで多くないですよ。ザラにいますって。カツオさんみたいに年間500~600本って人もいますし。
深田 いやいや、ぼくからしたら200本以上書いてるのは一部のやばい作家だけですよ(笑)それだけ頑張れる原動力は何なんですか?
八坂 日課でやり続けてることがありまして。「4色ボールペンでスケジュール帳を埋める」っていう。
深田 なんですか、それ?
八坂 仕事があんまりない時に斉藤孝さんの「3色ボールペン情報活用術」っていう本を読んで、その中にスケジュールを3色ボールペンで分けるってあって、受け売りでやり始めたんです。台本・企画書とかの作業をする時は青、睡眠や会食、プライベートは緑、移動、ご飯、風呂とか生活で削れないことは黒、そして、会議や打ち合わせとか人に会う仕事が赤。
深田 はいはい。
八坂 で、スケジュール帳を「赤=人に会う」で埋められたら、何かしらの発注をされて仕事が増える、つまり収入が増える。だったら「とにかく赤で埋めていこう!」って決めたんです。でも仕事が無い時期はなかなか赤が増えないですから「じゃあ企画会議やっちゃえば赤で埋められるわ!」って。
深田 はぁ~なるほど!やっぱ変な人ですね~(笑)
八坂 だから知り合ったディレクターさんみんなに「企画会議あったら呼んでください。企画いっぱいあるんで」って、本当は企画なんてないのにあるってホラ吹いて回りました。それで企画会議に呼ばれるようになって、次第に企画会議やった人から仕事貰えたり、企画も実際通ったりするようになって仕事が増えていった感じですね。
深田 すごいな~。同じような話で「この作業にこれくらい時間かかった」みたいなのを全部スケジュール帳にメモしてますよね?
八坂 そうですね。ずっと4色ボールペンルールで生活していたら「この仕事はこれくらいの時間で出来る」が分かってくるんですよ。
「得損」で20分尺のロケ台本なら、何分だな。とか
「今でしょ講座」のスタジオ台本なら何分くらいだな。とか
「企画出し系の宿題」ならこれくらいでいけるな。とか。
それが分かったらスケジュールのパズルもうまく組めるようになって、会議と会議の間の空き時間をより有効的に使えるようになったんです。

(本人が手書きで作ってくれたイメージ)
深田 なんでそんなことしようと思ったんですか?忙しかった時に考えたんですか?
八坂 そうですね。一時期けっこう忙しい時がありまして。
深田 何年か前にレギュラー17本とかの時期ありましたよね?それくらいの時ですかね?
八坂 はい、その時期に仕事が回んなくなって毎日「死ぬ死ぬ!」って思ってて。「どうやったらクオリティーを下げずに仕事を回せるか?」って考えてそういう時間メモをするようになりましたね。
深田 ぼくがこんなこと言うのもなんですけどこのブロックが今回の取材のメインコンテンツになってると思います(笑)
八坂 え?そうなんですか(笑)
深田 「努力の男・デーブ八坂」の本性が最も現れたブロックになってますね。インタビュアー&ライターの僕としてはもう記事になった時のサイトのページがはっきり見えてますから(笑)
八坂 そうですか(笑)
深田 ではこのブロックの最後に質問です。それだけ仕事を抱えてテンパっても仕事を断らないのは何でですか?ピーク時は週に2回徹夜したり、制作会社で深夜にちょっとだけ寝てから次の仕事に行くとか。そんなに仕事引き受けなきゃいいのに、って思っちゃうんですけど。
八坂 それはもう売れたかったからですね。
深田 シンプルですね。じゃあ、なんで売れたいんですか?
八坂 売れたら好きなことや得意なことが出来るからですね。番組の企画提案も売れてる人と売れてない人ではまったく周りの聞く耳が変わりますし、さっきの歴史の本を書きたいっていうのもそうですけど、放送作家としてまず売れないとオファーなんてきません。やっぱり名が売れてこそ、次の段階に進めるし、仕事もしやすくなると20代の頃からずっと思っていたので。自分がより楽しく作家業をやるためには「好きで得意なこと」に行かないと。でも、まだまだですけどね。
深田 なるほど。あと頑張るのは家族の存在もありますよね?よく八坂さんが「家族のため」って言ってるの聞きますもん。
八坂 それはもちろんです。家族が出来たおかげで「稼ぐしかない」って割り切れましたから。27歳で子どもが産まれて、会社員でもないしサボれば仕事減るので家族が食えなったら自分のせいだって思うと遊ぶことも出来ないですし、働くしかないって覚悟を決められましたからね。そういう面では、お金がなかった20代で子どもが産まれたのは感謝ですね。本当はもっと遊びたかったですけど(笑)
深田 これは将来、お子さんには読んでいただきたいですね。